『MUSIC FROM THE ELDER』の評価は、発表当時の「KISSらしさから離れすぎた失敗作」という受け止めから、後年には「商業的には失敗したが、バンドの黄金期の型に収まらない野心的な異色作」へと相対的に見直された、と整理できる。音楽的な試み自体を評価する声は当初から存在したものの、当時のファンが期待した直線的なロックンロール/アリーナ・ロックとの落差が大きく、再評価は全面的な名盤認定というより、独立したコンセプト作品として価値を認める方向だった。
PERIOD CONTEXT当時の文脈
1981年の発表時、KISSは『DESTROYER』を手がけたBOB EZRINと再び組み、初の本格的なコンセプト・アルバムとして物語性とドラマ性を前面に出した。これは70年代のKISS――『ALIVE!』以降に確立した、即効性のあるリフ、派手なステージ、シンプルで強いロックンロール――から大きく踏み出す企画だった。そのため、音楽的には高く評価する向きがあった一方、ファン全般には歓迎されず、全米チャートでも75位にとどまった。直後のKISSが『CREATURES OF THE NIGHT』でHM色を強め、さらに『LICK IT UP』で新章へ移行したことも、後年この作品を「本流」ではなく転換期の孤立した一作として見せる要因になった。 後年の見方では、単純に『DYNASTY』『UNMASKED』に続く迷走の一枚とするより、ストーリー性を持つ独立性の高い作品として切り分ける評価が強まる。2015年の回顧では、KISSの作品群にありがちな三作単位の流れから外れた、実験と模索の結晶として位置づけられている。また、2021年の文脈では、EZRINとの仕事が後の『REVENGE』にもつながる点から、単なる失敗ではなく、KISSが音像を拡張しようとした重要な試みとして捉え直せる。つまり後年の再評価は、当時の商業的不振を否定するものではなく、「KISSの代表的様式から外れたからこそ残った作品」という価値の発見である。
LISTEN NEXT次に聴くなら
EVIDENCE根拠メタ情報
- BURRN! 2022年4月号 p.22・発表時の賛否、チャート、後続作への転換を整理
- BURRN! 2015年3月号 p.14・独立性の高い実験作として後年の位置を考察
- BURRN! 2021年12月号 p.39・『THE ELDER』から『REVENGE』への制作関係を提示
CONFIDENCE確度
高(high)
NOTES注意点
当時の評価は、商業成績やファンの反応と、音楽的な野心への評価が同時に存在していた。したがって「当時は酷評、現在は完全な名盤」という単純な反転ではなく、商業的失敗を踏まえたうえで異色作として再定位された、と見るのが妥当である。