NIGHTWISHとWITHIN TEMPTATIONは、女性ボーカルを“珍しいアクセント”から、メタルのドラマ性と市場性を担う中心要素へ押し上げた。NIGHTWISHはオペラ的な声、管弦楽的アレンジ、長編的な物語性を大規模なヘヴィ・メタルとして成立させ、シンフォニック・メタルを国際的な大衆ジャンルへ拡張した。WITHIN TEMPTATIONはゴシックの陰影を保ちながら、強いシングル、親しみやすい旋律、豪華な舞台、異ジャンルのゲストを組み合わせ、より広いロック/ポップ層やフェス audience へ接続した。両者の成功は、女性が歌うこと自体ではなく、女性ボーカルを核にした大作志向・視覚性・越境性をメタルの有力な形式として定着させた点にある。
PERIOD CONTEXT当時の文脈
1990年代後半から2000年代にかけて、欧州ではゴシック・メタルとシンフォニック・メタルが接近し、女性リード・ボーカルは作品の雰囲気づくりだけでなく、バンドの顔と物語を担う役割へ変化した。NIGHTWISHはフィンランド発の成功例として、ターヤ・トゥルネンのクラシカルな声を、巨大なリズム、オーケストレーション、ファンタジー/映画音楽的な構成に結びつけた。後年の誌面でも欧州で絶大な人気を持つ存在、フィンランドで最も成功したメタル・バンドの一つとして扱われ、シンガー交代を経てもブランドと様式を維持したことが示される。つまり、特定の歌手の技巧だけでなく、女性ボーカルを交換可能なフロントラインの核として制度化した。 WITHIN TEMPTATIONは1996年結成、2000年の『MOTHER EARTH』以後に人気を決定づけ、ゴシック由来の荘厳さを、より明快なメロディと大規模なショウへ展開した。日本のライヴ評では、シャロン・デン・アデルの美声とパワフルなステージ性が強調され、旧来よりヘヴィでメタリック、かつ攻撃的になった変化も指摘されている。『HYDRA』期にはターヤやラッパーなどを迎え、女性ボーカル・メタルを閉じた様式ではなく、ゲストやポップ的要素を取り込む開放的なフォーマットへ広げた。 日本ではWITHIN TEMPTATIONがLOUD PARKの第1回(2006年)と2014年に出演し、後者は約7年ぶりの来日として紹介された。豪華な装置がなくてもシンフォニック・メタルの本質を示す存在と評された点から、国内のメタル・フェスでもこの系統が特別枠ではなく、国際的な主役候補として受容されたことが分かる。後続のEPICA、DELain、BEYOND THE BLACKなどが受け入れられる土台にもなった。ただし、両バンドが女性ボーカル・メタル全体を単独で発明したわけではなく、THEATRE OF TRAGEDY、AFTER FOREVER、LACUNA COIL、EVANESCENCEらと並ぶ複数の潮流の中で、特に規模と可視性を押し広げた二組と位置づけるのが妥当である。
LISTEN NEXT次に聴くなら
EVIDENCE根拠メタ情報
- BURRN! 2015年4月号・欧州での成功と歌手交代の軌跡
- BURRN! 2020年3月号・欧州での人気規模と業界的位置
- BURRN! 2015年1月号来日公演の変化と女性歌唱の評価LOUD PARK出演と欧州での人気
- BURRN! 2019年1月号・結成史と作品展開の整理
CONFIDENCE確度
中(medium)
NOTES注意点
日本での受容については、継続的な売上推移や作品ごとの点数を通覧できる形ではなく、フェス出演・来日評・作品紹介から位置づけるのが中心となる。また「女性ボーカル・メタル」はゴシック、シンフォニック、オルタナティヴ寄りの複数系統を含むため、両バンドだけを単線的な起点とみなすのは避けたい。